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留学ビザから就職ビザへの変更の条件

中国人留学生が卒業後、企業に就職する場合、留学ビザから就職ビザ(就労ビザ)への変更が必要です。

そして、このケースの就労ビザへの変更のほとんどは、「技術・人文国際ビザ」となります。

現行法でこの「技術・人文国際ビザ」に在留資格を変更するには一般に以下のような条件が必要です。

例:技術・人文国際業務(※大学文系卒の場合)の概括的条件

1.総合職(貿易、営業、総務等)、通訳・翻訳、デザイナー等の仕事をすること

2.会社と日本人と同程度の給与で雇用契約などを結ぶこと

3.会社の経営状態に問題のないこと

4.大学の卒業

5.大学での専攻又は実務経験と従事する予定の仕事に関連性があること

上記条件を見ればわかるように、これまではどんなに優秀な留学生であっても、原則的には大学の専門分野に関連した就労、もしくは外国人の母国語を使う仕事等以外での就労は難しかったわけです。

この点確かに、現行法でも中国人留学生が貿易会社で翻訳、通訳を担当したり、経営学部で経理部に配属されるようなケースであれば、大きな問題はないかと思います。

しかし、例えば法学部を出た学生がタクシー運転手をしたり、文学部卒の学生が飲食店で働く、といったことは専攻との関連性を欠く単純労働となるため、原則的にはできません。

そうすると、例えば「留学生時代に居酒屋でまじめにアルバイトでよく働いてくれたから正社員にしよう」というようなケースでは、就職したくても在留資格の変更が認められない、という問題があったのです。

これでは、労使双方が納得しているのに、卒業後仕事ができず、雇用者も留学生もどちらも困る、という状況が続いてしまいます。

留学ビザから就職ビザへの変更の条件はこうなる

しかし、現在は未曽有の人手不足です。

また、外国人の新卒を積極的に雇いたいという企業も増えています。

そこで、外国人留学生の就労拡大と人材不足の解消をはかることを目的とし、政府が衝撃的なプランを打ち出しました。

これが実現されれば、今まではビザの問題で無理だった企業への就職が可能となりますから、留学生の就職先は大幅に拡大することは間違いないでしょう。

気になる条件ですが、以下のような条件を満たせば、在留資格の変更を認めることとなりました。

在留資格は「特定活動」となります。

留学生の就職ビザ申請の緩和された条件

(1)日本の4年制大学の卒業又は大学院の修了

→短期大学及び専修学校の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象になりません。ですから、例えばものすごく優秀な外国人で、ハーバード大学やケンブリッジ大学等を卒業していたとしても、日本の大学を卒業していないので、当該ビザは取れません。

(2)N1レベルの日本語能力が必要

ア 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方が対象です。
イ その他,大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方については,アを満たすものとして取り扱います。

なお、外国の大学・大学院において日本語を専攻した方についても、アを満た
すものとして取り扱いますが、この場合であっても,併せて日本の大学・大学院
を卒業・修了している必要があります。

つまり、日本語については、日常に支障のない程度のレベルが必要です。

ただ、日本語能力の高い留学生については、技術・人文国際業務でも採用される可能性が高いです。

そうすると、特定活動ビザの条件を満たしていても、他社でも内定をもらう可能性が高いと思いますので、ビザの申請以前に、必要十分な入社希望者を集められるか、という問題があります。

(3)日本人と同等額以上の報酬であること

昇給面を含め、日本人大卒者・院卒者と同等額以上の報酬である必要があります。この点は、技術・人文知識・国際業務ビザや技能ビザ等の就労ビザと類似します。

「日本人と同等額以上」であるかどうかは、同じ業務に従事する場合の給与相場や、母国での実務経験がある方は実務経験が加味された報酬であるかどうかも考慮に入れて報酬額を決定する必要があります。

(4)日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であること

居酒屋やレストランのホール業務等の接客業や会社の受付業務等、日本語を使ってコミュニケーションをする業務である必要があります。

逆に、例えば倉庫内で1名で黙々と仕分け作業をする等の単純労働のみでは許可されないということです。

(5)日本の大学や大学院で習得した広い知識及び応用的能力を活用する業務であること

日本で学んだ学問の知識を背景とする業務が一定水準以上含まれていること、または将来的に知識労働に従事することが見込まれていることが必要です。

ただ、この要件をあまり厳しくすると、技術・人文知識・国際業務ビザとあまり変わらなくなってしまいます。

ですから、個人的には、ここはあまり厳しい審査はないのでは、と思います。

特定活動ビザへの在留資格変更の必要書類

「特定活動」(本邦大学卒業者)及び「特定活動」(本邦大学卒業者の配偶者等)に係る在留諸申請に当たって必要な資料は次のとおりです。

(1)申請書(在留資格認定証明書交付申請書又は在留資格変更許可申請書)

(2)写真(縦4cm×横3cm)

(3)返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上,392円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)

(4)パスポート及び在留カード(在留資格変更許可申請時のみ)
※ 提示のみで,提出していただく必要はありません。

(5)雇用契約書の写し

(6)雇用理由書
(7)卒業証書(写し)又は卒業証明書(学位の確認が可能なものに限ります。)

(8)日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証明書(写し)。
なお,外国の大学において日本語を専攻した者については,当該大学の卒業証書
(写し)又は卒業証明書(学部・学科,研究科等が記載されたものに限ります。)

(9)事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
ア 勤務先等の沿革,役員,組織,事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書
イ その他の勤務先等の作成した上記アに準ずる文書
ウ 勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるトップページ等のみで可)
エ 登記事項証明書

まとめ

この在留資格は、大卒で、接客業に従事したい留学生にとっては、結構使えると思います。

実際、留学生は今までより就職先を幅広く選べるようになりそうです。例えば大卒の留学生が居酒屋のホール業務に従事するようなケースも増えると思われます。

逆に採用する側としては、日本語学科のある学校や留学生とのコネクションをどう作っていくかが採用のカギとなることでしょう。

日本人だとあまり実感がわかないかもしれませんが、これはビザに携わる専門家としてはかなり衝撃的です。

今まで職種に制限があるのが当たり前だったのが、当たり前ではなくなってしまうのですから。

なお、当事務所でも、留学生の特定活動ビザへの在留資格変更について相談を承っていますので、ビザのことでお困りであれば、お気軽にご相談ください。

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