中国人の就労ビザが必要な場合とは

中国人が日本で就労するには、入管法で定められている在留資格のうち、就労が認められる在留資格(就労ビザ)を取得する必要があります。

この「在留資格」は、日本の場合、「在留カード」に記載されます。在留カードは、外国人の日本におけるIDカードのようなものと考えてもらってよいかと思います。

そして、外国人を雇い入れるときは、この在留資格および在留期間を必ず在留カードで確認する必要があります。

 

 就労可能な中国人の就労ビザ

中国人は、入国すると、入国の目的に適合した在留資格を取得し、上陸します。入管法ではこの在留資格について27種類に細かく分類し、在留する外国人に応じて、その行動範囲を定めています。これを就労条件によって大きく分類すると、次の四つとなります。

 

① 就労が認められるもの

② 就労が認められないもの、または制限付きで認められるもの

③ 個々の許可内容によるもの

④ 就労活動に制限のないもの

 

そこで以下、それぞれに付き説明を加えます。

 

 

(1)就労が認められるもの(一般就労ビザ)

これは日本において収入を伴う事業を行うため、また報酬を受ける活動をするために要求される在留資格です。その例として、「外交」「公用」「芸術」「医療」「研究」「教育」「興業」「技術・人文知識・国際業務」「技能」「企業内転勤」「経営・管理」等の資格があります。

これらの資格を取得した外国人は、その資格の範囲内での就労活動が認められます。

したがって、「技能」の資格を取得し、中華料理のコックとして活動している人が、アルバイト的に日本人向けの中国語の家庭教師をする、といったことは原則的に認められません(ただし入管法19条に定める「資格外活動許可」を取得した場合はこの限りではありません。)。

また日本では専門的な知識を持って就労する、いわゆるホワイトカラーおよび熟練技能者のみに就労ビザを許可しています。

従って、例えばITプログラマーについては、「技術・人文国際ビザ」が与えられますが、繊維工場の工員等の「単純労働者」と呼ばれる者には就労ビザは与えられません。

 

 

 (2)就労が認められないもの、または制限付きで認められるもの

就労が認められないものの例としては、「留学」「文化活動」「研修」「家族滞在」「短期滞在」があります。この資格を持って在留する外国人は、報酬を得る活動をすることはできません。ただし、入管法19条に定める「資格外活動許可」を取得した中国人は、ある一定の限度で、収入を伴う活動をすることが認められます。

 

(3)個々の許可内容によるもの

この例として「特定活動」という在留資格があります。この「特定活動」が認められる例としては、以下のような場合があります。

 

① 外交官・領事官等に私的に雇用される家事使用人

② ワーキング・ホリデー制度により入国する者

③ 国際仲裁代理を行う外国弁護士

④ インターンシップの活動を行う大学生

 

これらの外国人は、その特定された活動の範囲内での収益活動が可能となります。

 

 (4)就労活動に制限のないもの

「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「永住者」の資格を取得して日本に在留する外国人は、その活動に制限がなく、就労できます。

前掲(1)~(3)までの在留資格にて在留する外国人は、職種が限られたり、就労できる時間が決まっていたりとその活動範囲が制限されます。

しかし、この資格を持つ者であれば、職種に制限なく就労が可能となります。

 

就労ビザのない不法就労者を雇用しないこと!

上記のような就労ビザを取得している中国人を雇用し、法律の範囲内で就労してもらうことに問題はありません。

ただし、不法就労者を雇用すると、厳しい罰則が待っています。

そこで次に、不法就労者とはどんなものをいうのか、見ていきましょう。

 

 (1)不法就労者とは

不法就労者とは、次のような外国人のことをいいます。

① 不法に入国して就労している者

② 在留資格ごとに認められている活動範囲を超えて、就労活動をしている者

③ 在留期間を超えて在留し、就労している者

 

 (2)不法就労助長罪とは

国はこのような不法就労者等を減少させるため、厳格な出入国管理と不法滞在者の摘発を行っています。

その中で、雇用者に対する罰則を設け、「不法就労助長罪」として次のように厳しい罰則を定めています。「不法滞在者または就労することのできない在留資格の外国人を、それを知って就労させたり、他の会社等に斡旋したりした場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する」(入管73の2)

なお、罰金については、平成16年の法改正において200万円から300万円に引き上げられています。

また、現在は「在留資格等不正取得罪」が成立し、虚偽申請をしただけでも刑罰を受けることになっています。

ですので、中国人スタッフを雇用していないのに雇用したことにして就労ビザを取得すると、刑罰の対象になりえますから、虚偽申請を行わず、正直な申請を心がけてください。

 

中国人スタッフを雇用する際の留意点

 

 (1)中国人スタッフの雇用前の確認事項

以上、述べてきたように、我が国に在留する外国人には、無制限にその活動が保証されているわけではなく、その在留資格の範囲内での活動が認められるに過ぎません。

したがって外国人を雇用する際にも、その在留資格が、雇用する側か求める職種に合致しているか、また在留期間は超えていないか、といったことをその外国人ごとに精査し、雇い入れなければなりません。これらを確認するための資料としては、次のようなものの呈示を求めて確認作業を行うことになります。

 

① パスポート(旅券)

② 査証(VISA)

③ 在留カード

④ 就労資格証明書

⑤ 資格外活動許可書

 

以上のもので、適法に日本における在留資格を取得していると判断したあと、雇用関係を成立させ、中国人スタッフの就労が可能となります。

 

(2)中国人スタッフの雇用後の注意点

中国人労働者についても労働基準法を始めとした我が国の労働関係法規のほとんどが適用されます。労働基準法では「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」(労働基準法3条)という規定が定められ、以下のことが禁止されています。

 

① 外国人であることを理由に賃金形態、昇給基準等で差別的な取扱いをすること

② 外国人労働者のみに適用する就業規則を作成し、日本人労働者と異なる労働条件を規定すること

③ 外国人労働者に就業規則を適用しないこと

 

なお、中国人労働者との取決めは文書等に記録しておけば、無駄なトラブルを避け、良好な労働環境を確立することができると思われますので、日本の専門家と相談しながら、労働契約書や就業規則を作成することをおすすめいたします。