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中国人コック(料理人)を海外から呼ぶための方法

中国人経営者が中華料理店経営のための経営管理ビザを申請する際は、同時に中国人コックの「技能ビザ」の申請が必要になります。

技能ビザとは、日本の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動のためのビザをいいます。

例をあげると、中華料理・フランス料理・イタリア料理などのコック(調理師)、貴金属などの加工技能師、スポーツトレーナー、外国の建築技能を持った大工、航空機のパイロット、ソムリエ、ペルシャじゅうたんを織るイランの職人、貴金属等の加工技能師などが該当します。

この「技能ビザ」の在留資格を取得するための条件や申請書類につき、以下徹底解説いたします。

中国人が「技能ビザ」の在留資格を取得するための要件

1.中華料理、食品の製造について10年以上の実務経験があること

→実務経験には、中国の教育機関で料理の調理、食品の製造についての科目を専攻した期間も含まれます。ただし、実務上は、10年間の実務経験の立証は簡単ではないことが多いです。

また、「食品の製造」も技能ビザの範疇に入ることに注意が必要です。餃子の製造については、技能ビザとして認められているケースがあります。

2.日本人が働く場合と同等額以上の報酬を受けていること

→例えば、最低賃金以下等、あまりにも安い給料で働くことは認められていません。

中国調理師職業資格制度

中国の場合、調理師については、職業資格制度があり、職務経験や能力により、ランク分けされています。

「中華調理師」には「中式烹調師」(料理)と「中式面点師」(デザートなど)の他、「洋食調理師」、「酒料理師」、「栄養調理師」などがあります。
中華料理師の職業資格証書には次のとおり5段階の等級(レベル)があり、それぞれの取得要件が規定されております。

1 初級:国家職業資格5級

見習コースを完了した在職職員または職業学校の卒業生。

2 中級:国家職業資格4級 

初級証書を取得し5年以上の仕事経験を持ち、または労働行政部門の規定に準ずる中級技能を狙う技術専門学校及びその他の学校の卒業生。

3 高級:国家職業資格3級 

中級証書を取得し5年以上が経過し、関連職業において10年の職務経験を持ち、または正規の高級技能訓練コースを修了している者。

4 技師:国家職業資格2級 

中級証書を取得し、豊富な生産・実践経験を積み、操作技能などに特長があり、関連職業において重要な技術難問を解決でき、中級技術者を教える能力を備える者。

5 高級技師:国家職業資格1級 

3年の技師経験があり、完璧な技術を備え、本職業の高度難問を解決でき、技術革新及び故障防止などにおい顕著な貢献があり、高級技術者を育てる能力を持ち、リーダシップが発揮できる者。

「技能ビザ」の申請書類

「技能ビザ」の在留資格の申請に必要な書類は以下のとおりです。

在留資格認定証明書交付申請書
写真4cm×3cm
434円切手を貼り付けた返信用封筒
働く会社の概要を明らかにする書類
(会社案内書、登記簿、決算書の写し、事業計画書、外国人社員リスト等)
稼働先店舗の概要を明らかにする書類
(営業許可証の写し、賃貸借契約書の写し、店舗全体の見取り図、メニュー表、厨房・客席・外観の写真等)
申請人(料理人)の履歴書
公的機関が発行する資格証明書がある場合はその写し
在職証明書等の業務に従事した期間を証明する文書
(10年以上の実務経験を証明する書類)
申請人(料理人)の具体的な活動の内容、期間、地位、報酬を証する書面
(雇用契約書の写し、辞令の写し、採用通知書の写し等)

※ケースによって、上記以外の資料が必要になる場合があります。

中華料理店が中国人コックを雇用する際の3つの注意点

①職業資格証明書は国外用を提示

上記の通り、中国は調理師免許制がありますので、中国の技能証書には、中国国内用(中国語で記載)と国外用(中国語と英語の併記)のものがあります。

日本の入国管理局には、中国国内用(中国語で記載)ではなく、国外用の原本を提示する必要があります。

②戸口簿の職業欄が間違っていないかを確認する

中国人は戸口簿に職業の記載欄があるため、戸口簿の写しの提出を求められます。

その際に、従業員の戸口簿の職業欄が、「厨師」、または「麺点師」になっているかどうかを確認してください。

時々、コックなのに「農業口」、「職工」等となっているものを見かけますが、これでは不許可となってしまう可能性があります。

③在職証明書と履歴書が一致しているかどうかを確認する

まず大前提として、技能ビザがほしいからと言って、10年以上の実務経験を証する在職証明書のウソは絶対に駄目です。

入国管理局は、実務経験の信ぴょう性については、現地中国に直接電話をし、裏をとりますし、現地の大使館、領事館に連絡を入れ、現地調査もします。

ですから、結局、ウソの申請をしても、不許可となりますし、今後のビザ申請についても信用されませんので、絶対にやめてください。

10年以上の実務経験は、原則として在職証明書で証明しますが、この在職証明書をよく観察することが重要です。

在職の年月日、店の名前等が違っている場合は、不許可になるリスクがあります。

逆に、在職の年月日、店の名前等が合っていれば大丈夫、というわけでもありません。

例えば、22才の中国人の若い調理師が技能ビザの申請をした場合、どうなるでしょうか?

この場合、小学校からコックをしていないと10年間の実務経験の条件は満たせません。ですから、こんな若くてコックの在留資格はありえない!ということになります。

さらには、10年以上の調理師の経験があっても、その店が潰れていて経験の証明が困難な場合もあります。

このように、10年間の履歴を証明するには、実際は、いくつものハードルがあるのです。

④中華料理のメニューと店舗の規模に注意する

まず、中華料理店のメニューについてですが、基本的に5,000円以上のコースメニューが存在し、かつ単品料理が存在することが重要です。

つまり、コースメニューがある、一定の高級店でないと許可は下りにくい、ということです。

逆に、大衆中華料理店でラーメンや餃子等のメニューしかない店では、技能ビザを許可することは難しいです。

次に、座席数ですが、座席数が30席以上あることが理想です。

小さい店のほうが初期コストはおさえられますが、カウンターのみ10席ある、というようなこじんまりとした店では許可が下りにくいことは知っておいてください。

⑤店の広さや事業規模と合わない人数の中国人調理師を1度に招へいしない

たまに、「中国人のコックを中華料理店で採用し、在留資格認定証明書で招へいしたいが、何名まで呼べますか?」という質問を受けます。

入管法は、1店舗につき何人の外国人コックを採用できるかについては、明記していません。

そのため、実際に、何人の外国人コックを採用できるかについては、その店の広さ、席数、営業日、営業時間等の要素から決まります。

つまり、事業の運営上、通常合理的に必要な人数までは外国人調理師を海外から呼ぶことは可能です。
具体的には、20席ぐらいの小規模な中華料理店であっても2人か3名の調理師くらいなら招へいできると思います。なぜなら調理師が1人で全営業日・全営業時間を勤務することは現実的にはできないからです。

問題は、あまり大きくない店で、技能ビザで3~5人招へいしたりするケースです。

通常、20席程度の店であれば、5名の調理師は不要に思えます。

そのため、このようなケースで許可を得るには店の広さ、席数、営業日、営業時間等が関係するのです。

例えば1店舗につき5名の外国人コックを技能ビザで採用するには、文書で「その人数の調理師が必要な合理的な理由」を説明します。そして、広さの証明、席数の説明、営業日と営業時間の説明に加え、それぞれの調理師のシフト表なども添付します。
店の事業規模に通常合わない人数を採用しようとすると「名義貸しではないか?」と疑われ、不許可になります。

⑥在留資格に合った活動をすること
「コックに注文を取る作業もついでにやってほしいんだけど。。。」という相談も受けます。

しかし、あくまでも熟練した技能を発揮するのが外国料理人の仕事で、ホールでの作業は単純労働となります。

したがって、技能ビザで働く外国人コックは基本的に、ホールなどの単純作業は禁止されています。
また、「自分で料理もして、店の経営もすべて技能ビザをもっている中国人コックにまかせたいんだけど、、、。」という相談もよくあります。

しかし、外国料理店を経営する仕事は「経営管理ビザ」になりますので、技能ビザで中華料理店を経営することはできません。

上記のような活動を行いますと、「資格外活動」に該当し、違法となりますので、違反のないようご注意ください。

技能ビザ申請についてのQ&A

Q.「技能ビザ」の在留資格の要件にある実務経験に中華料理店でアルバイトをしていた期間は含まれますか?

A.「技能」の在留資格には熟練した調理の技能があることが審査のポイントになりますので、アルバイトの場合、状況にもよりますが、一般的に皿洗いや調理補助という仕事をしていたものと見なされてしまうことが多く、アルバイトの期間は認められないことが多いようです。

Q.新しく経営管理ビザを取得し、日本で中国料理のレストランを始めて、中国在住の中国人調理師を雇おうと思っているのですが、どんなことを確認する必要がありますか?

A.まず、中国人のシェフの方に関してですが、中国料理に関して10年以上の実務経験があるかどうかを確認する必要があるかと思います。
また、雇う側としましては、「技能」の資格の職人を雇う場合、メニュー、店の規模や事業継続性や事業安定性を見られますので、新規事業の場合は特に事業計画をしっかり立てておくことが必要です。

Q.「技能」の在留資格でコック以外の接客や皿洗い等の雑用の仕事をしてもらうことはできますか?

A.「技能」の在留資格は熟練技術のある調理師に与えられる在留資格になりますので、雑用の仕事をすることを目的にして雇うことは認められていません。

Q.「技能」の在留資格で働いていましたが、今度、別のお店でコックとして働くことになりました。何か手続きをする必要がありますか?

A.同じ職種で働かれるということですので、在留資格の変更は必要ありませんが、所属機関が変更になっているので、所属機関変更の届け出が必要です。また、このようなケースでは「就労資格証明書」を申請することをお勧めします。「就労資格証明」があれば、現在の在留資格をもって新しいお店で働くことが認められたことになり、在留資格の次回更新時の手続きもスムーズになりますので、安心かと思います。

当事務所のサービス

当事務所では、開業以来10年以上にわたり、中国人調理師(コック)の技能ビザ申請の代行を行ってきております。

技能ビザの申請でお困りの場合は、是非一度ご相談ください。

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