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外国人が不動産投資目的で経営管理ビザ申請すると経営管理ビザは取得しやすいのか

中国人をはじめとする外国人の間では「日本の不動産を購入すると経営管理ビザが取得しやすい」といううわさが同国人同士のネットワークで流れているようです。

そこで、今回、その真偽について解説します。

不動産投資の主なリターンは民泊事業だった

まず、不動産投資の主なリターンは、不動産の値上がり益と賃料収入です。

ただ、大阪や東京周辺のマンションの賃料の利回りは、良くて4%~5%弱ではないかと思います。

ではなぜ、中国人の富裕層がそのようなマンションを買うのでしょうか。

これは以前は民泊事業(※ほとんどが違法なヤミ民泊)への投資が多かったのが現状です。

民泊事業の運営には以前から旅館業法上の許可や特区民泊の許可が必要なケースがほとんどだったのですが、逆にほとんどの民泊オーナーが必要な許可を取得していない現状がありました。

しかし、2018年の法改正により、ヤミ民泊事業の運営は、きわめて困難になりました。

そのため、多くの中国人民泊オーナーが不動産を手放したり、許可を取ったり、賃貸に切り替えたりしたかと思います。

実際、当事務所でも、法改正前から、民泊事業を行っているオーナー様から「民泊事業を行う会社を設立し、経営管理ビザを取得したい」という問い合わせを数多く受けました。

しかしながら、当然、違法な民泊事業を続けたいという中国人オーナーの方に、日本の入国管理局は経営管理ビザを与えません。

ですから、民泊事業で経営管理ビザを取得したい場合は、きちんと旅館業の許可や特区民泊、現在では民泊新法等に基づく許可を得て経営管理ビザの申請を行う必要があります。

不動産事業と経営管理ビザの関係についての大きな誤解

中国人富裕層の間では、「不動産に投資していれば、経営ビザは簡単に下りる」といううわさが回っているようです。

これは、海外の移民法では、一定額以上の不動産投資をすると、投資家ビザがもらえたり、永住権をもらえるような国もあることに起因するのではないかと思います。

しかし、日本の入管法には「投資家ビザ」というものはありません。ですから、たとえ100億の物件に不動産投資をした場合でも、不動産に投資しているだけでは経営管理ビザは下りません

あくまで「経営・管理」ビザは事業の「経営者」もしくは「管理者」であることが条件ですから、「不動産事業を経営」していることが重要です。

「不動産事業を経営」するとは?

では、「不動産事業を経営」しているとは、どのような状態をいうのでしょうか。

まず、経営・管理ビザの条件は500万円以上の投資と住居とは別に事務所を借りることが重要な条件です。

実際、都市部では500万円未満の物件はさほど多くありませんし、これ自体は多額の資金を有する富裕層にとってハードルが高いわけではありません。

むしろ重要な問題は、「経営の安定性」です。

前述のようなヤミ民泊事業の場合、そもそも違法ですから、いつ事業が停止してもおかしくありませんので、当然「事業の安定性、継続性」はありません。

また、ワンルームマンションの投資の場合は、家賃が月数万円の場合もありますから、これだけの収入では日本では生活していくことが困難ですから、「事業の安定性、継続性」はないと判断され、ビザはおりにくいと思います。

一方、法人名義でマンションを1棟買いしているようなケースでは、「事業の安定性、継続性」はあるということになりやすいでしょう。

ですから、このような場合は経営管理ビザは取得しやすいといえます。

つまり、事業規模によるので、一概に「不動産投資目的で経営管理ビザ申請すると経営管理ビザは取得しやすい」とは言えないのです。

ただ、不動産投資事業と貿易事業を比べた場合、不動産投資事業のほうが初期投資額が大きいですし、何に投資したかは明確です。

そういう意味で、「事業内容の立証がしやすい」という面はあるかもしれません。

近時の中国人富裕層の不動産投資の傾向

以前はいわゆる「利回り」を求める投資が多かったのですが、近時はそれだけではありません。中国からの「移住」を求めるケースも多くなっています。

つまり、「子供に日本の教育を受けさせたい、中国よりも安全で自由な日本が好きだから住みたい」という理由も少なくないのです。

もちろん、中国で不動産投資をすることは可能です。しかし、中国ではそもそも土地は国家のものであり、土地の「所有権」は個人に認められません。

個人が購入することができるのは、「使用権」のみである。たとえ購入したマンションであっても、そこを立ち退けと政府に言われれば立ち退かざるを得ませんし、それがありうるのが中国です。また、言論の自由も保証されているとはいいがたいです。

ですから、中国国内の現金や土地建物も政策次第で価値を失うかもしれません。

一方、日本は思想も言論の自由も憲法で保障されているだから本国に近く自由を満喫できる日本は、中国の富裕層にとっては、地政学的にも安全な格好の投資先の一つであり、生活しやすい移住先なのです。

まとめ

当事務所が10年以上にわたり行ってきた経営管理ビザ申請の実務からすると、「不動産投資目的で経営管理ビザ申請すると経営管理ビザは取得しやすい」と言えるかはケースバイケースです。

人によっては、飲食店や貿易業のほうが、ビザがスムーズに下りることもあります。

当事務所では、中国人経営者の方が「日本の不動産を購入したらビザがもらえるよ」という同国人のうわさを信じ、ビザが不許可になるケースを多数見てきています。

ですから、あくまで中国人の友人やネットワークの噂話に振り回されず、専門家と相談して正しい情報に基づき、方針を決めていくことが重要です。

当事務所では、不動産投資や民泊事業の開業目的での経営管理ビザ申請につき、10年以上にわたり多数の実績を持っていますので、経営管理ビザの取得をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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