Q.私は、大阪に住んでいる中国人で、現在経営管理ビザを取得しています。子供は5人おり、全員中国にいます。
以前は中国に子供がいても児童手当を受給できましたが、現在、児童手当をもらうには、原則として日本に子供が住んでいないといけないと市役所の人に言われました。
つまり、日本に住んでいた人が短期留学する場合等、一定の例外を除いて、日本人、外国人を問わず、16歳未満の海外在住の子供がいても、児童手当の支給がなくなるようです。
また、日本では児童手当制度の創設と引き換えに扶養控除も廃止されたため、扶養控除も出来ないとのことです。
私のように、子供が全員海外在住で、児童手当が全く支給されないケースには、扶養控除を認めないとおかしいと思いますが、どうでしょうか?

A.なるほど、確かにそうですよね。お気持ちはよくわかります。

一般に、児童の年齢や出生順に応じて受け取れる手当の金額は以下のとおりです。

(支給対象児童) (1人あたり月額)
0歳~3歳未満 15,000円(一律)
3歳~小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円※)
中学生 10,000円(一律)

※ 「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育しているお子さんのうち、3番目以降をいいます。

※ただし、手当を受け取る人の所得が所得制限限度額以上の場合には、特例給付として児童1人につき月額5千円を支給します。(所得制限限度額についてはQ2をご覧ください。)

※なお、児童手当は、毎年6月(2月~5月分)、10月(6月~9月分)、2月(10月~1月分)に支払われます。

さて、実際に政策的に日本政府がどのような考えをもってそうしたのかは知りません。

ただ、私なりの考えを述べると、例えば高所得の日本人と来日した外国人を比較した場合、外国人優遇政策になるケースがあるからではないでしょうか。

極端にしたほうがわかりやすいのでそうしますが、つまりこういうことです。

A:日本人 日本在住 年収4000万円 子供 5人(全員日本在住のケース)

→児童手当(所得制限以上の特例給付)は年額 5千円×5×12=30万円

B:来日外国人 日本在住 年収4000万円 子供 5人(子供は外国在住の
ケース)

→扶養控除38万円×5人=年額控除は190万円×税率約40%(と仮定)=76万円

このように、同じ年収でも税金的には本人よりも来日外国人のほうが扶養控除を適用することで毎年税制上有利になります。

そうすると、高額所得者の日本人は扶養控除を選べず、より税制上不利な特例給付を選択しないといけない半面、高額所得者の外国人は従前同様税制上有利な扶養控除を選べるケースが出てきます。

これでは、扶養控除を手当てに変えることでより高所得者の負担を多くし、低所得者に有利な制度に変更したにもかかわらず、高額所得の日本人のみ負担が増え、高額所得の外国人は特に負担は減らない、という不公平なケースが起こってしまいます。

また、日本の扶養費は基本的に国内で消費されるというのが建前です。

一方、ずっと外国在住の子供に児童手当を認めても、これは、原則としては子供のために海外で消費され、結局国内に還流しない性質のものです。

そうすると、これを10数年も給付し続けるのは日本にとっては資金が海外に流れるだけで国内消費に回らないので、メリットのない話と考えたのではないでしょうか。

一方で、子供が留学しているなど一時的に海外に住んでいることが理由で児童手当を受給できないとすれば、これはこれで不公平ですから、この場合は給付としたのだと思います。

この場合に、多分文句を言うのは主に海外に子供を置いて日本に働きに来ているアジア諸国の親たちなのでしょうが、一方で、彼らと同じ年収なのに日本人のほうが手取りが少なくなるという制度設計だと、何で出稼ぎ外国人だけ優遇するんだ、という話になってしまうのではないでしょうか。

結局のところ、日本では、日本に住んだことのない外国在住の方に社会保障費が流れるというのはおかしいという考え方がベースにあるように思われます。

相談者の方は子供も多いようですし、この制度に納得いかないのであれば、日本に子供を連れてくるしかありません。国籍による児童扶養手当の差別はありません。

もし全員が日本で暮らすことになった場合、お子さんの年齢や所得にもよりますが、月額1万円のケースの場合、1万円×5名×12=60万円が毎年支給されることになります。

共働きの夫婦だと子供を連れて日本で生活するのはなかなか大変ですが、毎年60万円が非課税で入ってくるのは、結構大きいと思いますので、是非家族一緒に日本で生活することもご検討いただければと思います。

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