技能実習生の就労ビザ申請は許可されるか?

近時、日本の中小企業では、慢性的な人手不足で若い人達が集まらない、一旦就職しても定着せずすぐやめた等、人材不足の状況が続いています。

そのため、日本人の新規採用、従業員の新規定着は非常に難しい状況が続いています。

そのような社会事情背景もあってか、「以前、当社で受け入れていた中国人技能実習生をもう一度日本に呼んで採用したいのですが、可能でしょうか?」と問い合わせをいただくことが非常に多いです。

では、過去に同じ会社で技能実習生として日本に来ていた外国人をもう一度日本に呼んで、就労させることはできるのでしょうか?

 

過去の技能実習生の就労ビザの条件

 

過去に技能実習生だった外国人を就労ビザで呼び寄せる場合、「技術・人文国際ビザ」で招聘することが多くなります。

従来は「技術ビザ」と「人文国際ビザ」は別のビザでしたが、現在は統合して1つのビザ(在留資格)となっています。

そこで以下、この場合の条件につき説明します。

 

 

A.「技術ビザ」に該当するケース

 

① 従事しようとする業務に必要な知識にかかわる科目を専攻して大学を卒業しているか、同等以上の教育を受けていること。
または、従事しようとする業務について10年以上の実務経験を持ち、必要な知識を修得していること。
ただし、IT技術者としての業務に従事しようとする場合は、一定の情報処理技術者試験に合格しているか資格を取得していると、この基準は免除されます。

② 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること。

※ 「大学」には、大学の専攻科、短期大学、大学院、大学付属の研究所、放送大学も含まれます。
※ 「10年以上の実務経験」には、大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程、または専修学校の専門課程でその知識にかかわる科目を専攻した期間が含まれます。

 

なお、この他にも、契約先の機関(雇用主となる企業など)の事業が適正に行われ、安定性・継続性のあるものであることが求められます。

 

B.「人文知識・国際業務ビザ」に該当する場合

人文知識・国際業務ビザを取得するための要件としては申請人が次に該当していることが必要です。

 

①人文知識に該当するケース
(1)申請人が人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、これに必要な知識にかかる科目を専攻して大学を卒業しもしくはこれと同等以上の教育を受けまたは従事しようとする業務について10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程において当該知識にかかる科目を専攻した期間を含む)により、当該知識を習得していること。

(2)日本人が受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

 

 

②国際業務に該当するケース
申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。

(1)翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発、その他これらに類似する業務に従事すること。

(2)従事しようとする業務に関連する業務について、3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が、翻訳、通訳、または語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りではない。

(3)日本人が受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

 

以上のような「技術・人文国際ビザ」の条件を満たしていれば再度技能実習生を呼び戻すことができる可能性がありますが、実務上は様々な困難が生じます。

 

元技能自習生の就労ビザ申請の注意点

 

①業務内容が合わない

 

元技能実習生の方に就労ビザを取得してもらうときに、いちばん注意しなければならないことは、業務内容です。

技能実習で行っている業務はざっくりいうと、単純労働と就労ビザで行える労働の中間的な業務のため、技能実習生として行っていた業務内容では就労ビザはおりません。
ですから、単に今自分の会社が人材不足だから、という理由で技能実習生にもう一度来てもらいたいとお考えの場合は、業務内容が就労ビザの条件を満たしていないケースがほとんどです。

 

②技能実習生は大学を卒業していないことが多い

さらにもう一つの問題は、技能実習生として日本に来る方の場合、大学を卒業していないことが多いです。

大学を卒業していなければ、職歴の要件を満たす必要があるのですが、職歴は10年必要です。

ところが、技能実習生は主として20代の非常に若い世代の方が選抜されますので、10年も実務経験のある方はほとんどいないのです。

また、技能実習生として1,2年仕事はしていますが、技能実習生として行っていた業務内容に関する職歴は実務経験年数に加算されません。

このような理由で元技能実習生の方をもう一度日本に呼ぶのは難しいケースが多いです。

 

③技能実習生で来日するときに学歴や職歴を偽っている

 

技能実習生を日本に再度呼ぶ場合は、以前の経歴と今回の就労ビザ申請との整合性がチェックされます。

本来、人の経歴が違うということはおかしいのですが、技能実習生は厳しい選抜を通過するために経歴を持ったり、送り出し機関が嘘の履歴書を作成しているケースがあります。

そうすると、今回の就労ビザ申請で本当のことを書いて、以前の申請の嘘がばれて不許可になることがあります。

ですから、技能実習生をもう一回呼びたい!とお考えの方は、以前の学歴(もしくは職歴)が嘘でないか、ちゃんと本当のことを申告しているか、よく確認してください。

 

③技能実習生の制度目的にそぐわない

 
技能実習の制度目的はそもそも日本で修得した技術を本国に持ち帰って活かすことです。

ですから、日本で学んだ技術は本当に日本で生かされたのか?日本での技能実習の期間が終わってからどういった職業に就いていたのか?という点も入管の担当官から審査される可能性があります。

 

当事務所のサービス

当事務所では、開業以来10年以上にわたり、ビザ専門事務所として、難しい事案を多数解決してきております。

ですので、「当社の業務内容で就労ビザは許可されるか?」「この中国人技能実習生の学歴でビザは下りるのか?」など、ご不明な点がある場合は、ぜひ当事務所までお気軽にお問合せください。

貴社の事業内容や業務内容、申請人様の学歴・職歴をヒアリングさせていただき、適切なアドバイスをいたしますので、お気軽にご相談ください。

 

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