Q 私は、日本に来ている中国人留学生です。私は車の運転が大好きで、日本でタクシーの2種免許まで取得しました。

そこで、タクシー会社に就職して、就労ビザ取得を考えていますが、可能でしょうか。

 

A 近時、日本では在日中国人が中国の配車アプリを使って日本に来た中国人観光客を車で運んでかなり儲けた話が飛び交っています。

しかしながら、日本ではタクシー営業は免許制ですので、中国の配車アプリを使って日本の観光客を自家用車で運んで利益を上げることはいわゆる「白タク」行為として法律で禁止されています。

ですから、いわゆるUBER等で自家用車で稼ぐ行為はそもそも無免許での違法ビジネスですから、就労ビザは許可されません。

このような傾向は海外でも同様で、例えばバリ島でも問題視されており、バリ島の観光地のタクシー乗場では「Uber/Grab/Go-Jek立ち入り禁止」の看板をよく見かけました。

場所によってはホテルにUberを呼ぶと、ホテルの従業員が乗客がUber車に乗り込む写真を撮ってFacebookに投稿するなんてこともありました。

では、このような違法なビジネス形態のケースはさておき、正規のタクシー会社に入社した場合は、タクシー運転手として働けるのでしょうか。

まず前提として、タクシー運転者になるためには、第2種運転免許が必要です。

道路交通法では、外国人の運転免許取得についての除外規定はありませんので、日本人と同様、1種免許,2種免許とも外国人の取得が可能です。

従って、適法に在留している外国人は、日本人と同様、1種免許を取得した3年後には、2種免許の受験資格が得られます。

そして、無事試験に合格すれば、日本人と同じく、タクシーのドライバーとして活躍できそうな気もします。

しかし、外国人は、日本人とは異なり、次に、就労ビザの取得の可否を検討する必要があります。

日本のビザは、

①「経営・管理」、「技術・人文国際業務」等、一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って就労が可能な在留資格

②「文化活動」、「留学」、「家族滞在」等、収入を伴う職業活動が原則として認められていない在留資格

③「永住者」、「日本人の配偶者等」、「定住者」等、職種、業種を問わず就労可能な在留資格

等があります。

①の場合ですが、まず、外国人観光客を対象としない、一般のタクシードライバーの場合、外国語も必要なく、観光の知識も要求されませんので、就労ビザは許可されません。

では、外国人観光客のためのタクシードライバーであれば、就労ビザを申請して、許可される可能性はあるでしょうか。

この場合は、かなり難易度は高いですが、許可の可能性がないわけではないと思います。

なぜなら、いわゆる観光タクシーのようなケースで、1日タクシーを貸し切り、大阪や京都の名所をめぐるような旅であれば、かなり外国語も必要で、観光の知識も要求されるため、一般の日本人ドライバーでは対応できないような業務となる場合があるからです。

しかしながら、許可されるには、タクシーを運転することが主要な業務要素でないことの説明が強く求められるため、かなり限定的なケースで許可されているのが現状です。

②の在留資格を持つ外国人は、本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲内で資格外活動の許可を受けて就労が認められます。

例えば、留学生のアルバイトについては、本来の活動である勉学活動を阻害しない範囲と考えられる週28時間以内で許可されています。

従って、入管法上は、日本に3年以上在留し、2種免許を取得した外国人留学生が資格外活動の許可を受けてアルバイトとしてタクシーの運転業務を行うことが可能かと思います。

しかし、安全な運転を行うため、旅客自動車運送事業等運輸規則では「日々雇い入れられる者」や「使用期間2ヶ月以内の者」等を運転者に選任することを禁止しています。

そのため、留学生のアルバイトを日雇いでドライバーにする等は認められません。

 

一方、③の在留資格をもつ外国人については、日本国内での就労活動に制限はなくどのような職業でも就労することができます。

したがって、2種免許を持っていれば法律上は就労ビザに変更することなくタクシー運転者として就労できます。

ただ、実務上はお客様と接するタクシー運転業務の特性から、業務に支障をきたさない程度に日本語が出来ることは必要です。

 

以上のことから、留学生がタクシー会社に就職してタクシードライバーとして就労するには、就労ビザへの変更が必要です。

そして、ケースによっては許可される可能性はあります。

ただ、一般に、そのハードルは非常に高いと考えますので、専門の行政書士と相談のうえ、申請を行うべきかと思います。