中国法人の日本支店の代表者に必要なビザ(在留資格)について
中国法人(主に中国有限公司)が日本で事業活動を行うために「日本支店(支店登記)」を設置するケースは年々増加しています。ここでは、中国法人の日本支店の代表者が日本で活動するために必要となる在留資格と、その要件・手続き上の注意点を分かりやすくまとめます。

中国法人の日本支店代表者に求められる在留資格
中国有限公司の日本支店を代表して業務を行う外国人は、以下いずれかの在留資格が必要です。
1.経営・管理(Business Manager)
支店の事業運営・管理を行う場合のメインとなる在留資格です。
日本支店の代表者は、原則としてこの在留資格を取得することになります。
【主な活動内容】
①日本支店の経営判断
②組織管理、財務管理
③契約締結・対外窓口
④労務管理 等
但し、2025年10月の省令の改正により、経営管理ビザの申請には3000万円以上の投資や日本語能力のある常勤職員を1名以上雇用する必要がある等、大幅に条件が厳しくなっています。
2. 企業内転勤(Intra-company Transferee)
中国本社の社員を、日本支店へ期間限定で派遣する場合に利用できます。
支店代表者でも、経営権や代表権を持たない場合は企業内転勤で赴任することが可能です。
【企業内転勤ビザ申請の場合の注意点】
①中国法人の本社で 1年以上 継続して勤務している
②日本支店での活動が「管理業務・専門業務」レベルである
→単純労働しか行わないようなケースは不許可になります。
③日本での「経営」そのものを行わないこと
→経営判断を伴う場合は経営管理ビザを申請する必要があります。
3.その他の在留資格(例外的)
①技術・人文知識・国際業務
→ 経営判断を伴わない事務・専門職に限定
②家族滞在
→原則 就労不可
支店「代表者」として活動するなら、実務上は経営・管理が最適であり、入管もこの資格を前提に審査することが多いです。

在留資格「経営・管理」の要件(日本支店の場合)
「経営・管理」は、子会社設立ではなく、外国会社の日本支店設立の場合でも以下の要件を満たす必要があります。
(1) 事業の実態があること
①事務所の確保(賃貸契約書が必須)
②支店が実際に営業を行うことの証明(机・PC、会社案内、ホームページ等)
(2) 資本金要件の扱い
外国会社日本支店には資本金という概念はありません。
代わりに、支店が行う事業に必要な運転資金が中国本社から振り込まれていることを示す必要があります。
【よく提出される資料例】
①海外本社→日本支店への資金送金明細
②初期運営資金の計画書
③支店損益計画書
(3) 代表者の経営能力を証明する書類
①経営経験、職務経験を示す職務経歴書
②中国本社での役職・業務内容
③本社の財務状況(決算書)
(4) 事業内容の明確性
次の資料があると審査がスムーズです。
①事業計画書(3年分が望ましい)
②取引先の見込み
③市場調査
④人員計画

「企業内転勤」で支店長が入国するケース
代表者でも、法律上の代表権を持たず、経営判断を行わない場合、企業内転勤が利用できます。
【利用できる典型例】
①日本支店の管理職として赴任し、代表権は日本人社員または別の外国人が持つ
②本社での勤務歴が1年以上あり、役職者として派遣される
【活動内容の制限】
実質的な経営行為をすると入管が判断した場合、更新が通らない
(→経営・管理への変更を求められることもある)

日本支店設立の手続の流れ(中国法人の日本支店の場合)
1. 日本支店の登記
【必要書類例】
①本社登記事項証明・定款
②宣誓供述書
③日本支店の日本における代表者の印鑑証明書
2. 日本支店代表者の在留資格認定証明書(COE)申請(※企業内転勤の場合)
【提出書類例(※一部抜粋)】
①事業計画書
②事務所賃貸借契約書
③中国本社の財務諸表
④本社→支店への資金送金証明
⑤本社の営業許可書及び支店の登記簿
⑥代表者の履歴書・職務経歴書
⑦宣誓供述書
申請先:日本の地方出入国在留管理局
3. 在留資格認定証明書(COE)取得後、日本領事館でビザ発給
4.日本入国→在留カードの交付

よくある不許可ポイント
❌ 事務所が「バーチャルオフィス」「コワーキングのみ」
→ 経営・管理では原則不可。固定・独立した事務所が必要。
❌ 資金送金がなく、運営資金が不透明
→ 支店運営の実現性が疑われる。
❌ 代表者の経営経験が弱い/書類が不足
→ 職務経歴書は詳細に。中国語資料は日本語訳必須。
❌ 事業計画に具体性がない
→ 日本での顧客・市場が曖昧なものは不許可リスク大。

まとめ
中国法人の支店代表者は原則「経営・管理」、例外で場合によっては「企業内転勤」も可能です。
まとめると、中国法人が日本支店を設置する場合、代表者の在留資格は以下が基本です。
経営・管理 :支店長・代表者として経営判断を行う場合(原則)
企業内転勤 :本社の管理職社員を派遣し、経営行為を行わない場合(例外)
中国法人の日本支店設立後のビザ申請においては、事務所確保、資金計画、事業計画などを十分に準備することで、許可率が大きく向上しますので、しっかりとした書類作成が重要です。
当事務所では、20年近くにわたり、中国法人の日本支店設立後のビザ申請を行ってきておりますので、お気軽にご相談ください。



