都市型ハイヤーの背景

以前は中国人の訪日観光客の車での移動手段といえば、バスかタクシーでした。しかし、バスは相乗りのバスか大型観光バスしか選択肢がありませんでした。また、タクシーも6人乗りのような大型タクシーは数が限られているという問題がありました。
そこで、訪日中国人観光客の増加に伴い、高品質で安全な移動手段の需要が高まってきました。
この点、都市型ハイヤーサービス(チャーター車両)は富裕層や団体旅行者に人気で、ビジネスチャンスとして注目されています。そこで今回は、中国人観光客向けに都市型ハイヤー事業を展開する際に必要な「許認可」について詳しく解説します。

都市型ハイヤーとは

都市型ハイヤーとは、観光地や都市部で予約制で運行されるプロ仕様の運転サービスです。タクシーとは異なり、一般道での流し営業を行わず、事前予約や契約に基づく運行が基本です。

この点、特定地域・準特定地域に指定された都市部(東京23区・大阪市など)では新規タクシー許可が制限されています。

大阪府域全体がこれらに指定されているため、法人タクシー・個人タクシーとも現状、新規開業不可の状態です。

そのため、例えば大阪で中国人観光客を有償輸送するには、都市型ハイヤーの許可を取得するのが現実的な選択肢となります。

都市型ハイヤーに必要な営業許可

都市型ハイヤーを事業として運営するには、以下のような条件が必要です。

1. 事業の基盤要件

● 営業所の設置
営業所は指定の都市内に物理的に設置しなければならず、事務所専用の使用権限を有する物件である必要があります。賃貸の場合、1年以上の契約が必要です。

【都市型ハイヤー営業可能エリアと最低車両数】

地方・都道府県 交通圏・区域名称・対象市町村 最低車両数
北海道 札幌交通圏(札幌市など) 10台〜
東北 ‑(なし)
北陸信越 ‑(なし)
関東 東京都:特別区・武三交通圏 10台〜
神奈川県:京浜交通圏(横浜・川崎・横須賀・三浦) 10台〜
千葉県:京葉交通圏(千葉市等) 10台〜
千葉県:東葛交通圏(松戸・柏など) 5台〜
千葉県:北総交通圏(成田・佐倉など) 5台〜
埼玉県:県南中央交通圏(さいたま市等) 10台〜
中部 愛知県:名古屋交通圏 10台〜
近畿 大阪府:大阪市域交通圏(大阪市・周辺) 10台〜
大阪府:北摂交通圏(池田・箕面など) 5台〜
大阪府:河北交通圏(枚方・寝屋川など) 5台〜
兵庫県:神戸市域交通圏(神戸・尼崎など) 10台〜
兵庫県:東播磨交通圏(加古川・三田など) 5台〜
兵庫県:姫路・西播磨交通圏(姫路など) 5台〜
京都府:京都市域交通圏(京都市・向日市など) 10台〜
中国 広島県:広島交通圏 10台〜
広島県:福山交通圏、小維市域 5台〜
山口県:岩国交通圏 5台〜
四国 ‑(なし)
九州 沖縄県本島交通圏 10台〜
沖縄離島(石垣島・宮古島) 5台〜
沖縄離島(西表島) 5台〜

例えば、大阪市内で都市型ハイヤー事業を開業予定の場合、最低10台の車両が必要です。

● 車庫(車両の保管場所)
原則としては営業所に隣接していることが必要です。ただし、例外的に営業所から直線2km以内に保有車両を格納できる駐車場が必要です。所有権または使用権の証明が求められます。賃貸の場合、1年以上の契約が必要です。

● 車両要件
車両は緑ナンバー(事業用)登録が必要であり、ハイヤーとして適した装備・清掃・安全対策が義務付けられています。最低保有台数は5台以上の地域が多いですが、都市部では通常10台以上を求められることが多いです。

2. 人員要件

● 運行管理者の配置
運行管理者資格を持った者を最低1名配置し、運行前点検・乗務員の健康確認などを行う体制が必要です。

● 整備管理者の配置
車両の整備記録・日常点検の管理を行う「整備管理者」を選任し、保守体制を確立しなければなりません。

● 運転手(乗務員)
二種免許を保有し、地理・法令に精通していることが前提です。インバウンド向けの場合は外国語能力(中国語・英語)を持つドライバーが望ましいです。原則的に、1台につき1.4人、つまり10台の場合、14人のドライバーが必要です。

3. 財務要件

● 資金力の証明
初期投資(車両、営業所、車庫、備品等)と運転資金(3ヶ月分以上)に見合う資金が確保されていることを証明する必要があります。自己資金比率も審査対象となります。

運転資金の内容 内容・費目
ドライバー人件費 給与・社会保険・手当など
ガソリン・整備費 運行にかかる変動費
保険料 自賠責・任意保険等
事務所維持費 家賃・通信費・消耗品など
車両費(リース等) リース料金・ローン返済分など
事故時備え 突発コスト対応資金(予備)

例えば、月間の固定支出が50万円と想定される場合、最低でも150万円(3か月分)を現金や銀行預金として保持することが求められます。

● 保険加入義務

対人・対物の自動車保険(任意保険含む)への加入は必須条件です。

4. 運行管理の条件

● 日報・点呼・アルコールチェック
全乗務員に対して、運行前後の点呼、飲酒チェック、体調確認を行い、記録として保存することが求められます。

● 運行記録の保存
運行日報や配車記録を一定期間保存し、行政指導があった際に提示できる体制が必要です。

5. 事業運営上のガイドライン

● 外国人対応体制
外国人観光客向けのサービスを行う場合、言語対応・文化配慮・観光案内スキルなどの整備が期待されます。特に中国人向けには、WeChat対応・QR決済導入・中国語表記のパンフレットが効果的です。

● 法令遵守の重要性
無許可で有償旅客運送を行う「白タク行為」は、道路運送法違反で厳重に処罰されます。事業開始前に必ず全ての許認可を取得しましょう。

たまにですが、申請さえしていれば、都市型ハイヤー事業を開始しても問題ないと勘違いしている方がおられます。

しかしながら、申請していても許可が出ていなければ都市型ハイヤー事業はできません。

従って、許可が出るまで待つことになりますので、ご注意ください。

外国語対応・外国人旅客対応の体制構築

特に中国人観光客を対象とする場合、中国語に対応できるドライバーや通訳体制を整えると有利です。

専門的な通訳ガイドの登録(通訳案内士)もあわせて検討しましょう。

都市型ハイヤー事業認可申請の流れ

①事業計画の策定

②地方運輸局への事前相談

③書類提出・申請手続き

④許可審査(2〜4ヶ月)

⑤運行開始前の車両登録・管理体制整備

申請上の注意点

白タク行為(無許可の有償輸送)は厳しく罰せられますので、中国人観光客の有償輸送を行う場合は、必ず都市型タクシーの許認可を取得してから行うことが必要です。

また、許可取得後も運行日報・実績報告義務がありますので、これを怠ると許可が取り消しになったり、罰則がつくことがあります。

当事務所では、都市型タクシーの申請代行サービスを行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

業務報酬(※参考)

都市型タクシー認可申請代行:45万円+税~(※個別見積もり)

※許可要件のヒアリング・アドバイス事業計画書・資金計画書・営業区域図・車庫の図面など申請書類一式の作成・提出運輸局等との連絡(補正対応含む)、許可後の届出・車番交付サポートのすべてが含まれます。関西圏の場合は、審査の面談同行・現地調査同席も含まれます。

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