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会社設立の際の現物出資とは

会社設立時に金銭以外の財産で出資することを、現物出資といいます。現物出資のメリットとしては、一般に、会社設立時の資本金を大きくすることができることや現物出資した財産が減価償却することで節税となるメリットがあります。

また、中国人の方にとっては、年間5万ドルの送金規制にかかっていたり、日本の銀行口座がない場合に会社設立ができたり、経営管理ビザの取得に役立つ等のメリットがあります。

 

現物出資として認められる財産

会社設立にあたり現物出資として認められるものは、譲渡可能で、貸借対照表に資産計上が可能なものです。

具体的には、以下のようなものが典型例です。

・土地、マンション、アパートなどの不動産

・日本国債、アメリカ国債等市場価値のある有価証券

・自動車、パソコン、オフィス機器、商品、原材料などの動産

・営業権・商標権などの知的財産権など無形固定資産

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会社設立時に仮想通貨を現物出資する方法は可能か?

会社を設立する場合、資本金に相当する額の金銭での出資が通常です。

ただ、不動産やパソコンなどの出資して現物出資の形で設立することも可能であることは上記の通りです。

では、ビットコインやイーサリアム、モナコインなどの仮想通貨を現物出資することは可能でしょうか。

仮想通貨は「金銭」そのものではありませんし、不動産やパソコンなどのようにはっきりとした「物体」でもありません。

ですから、一般の方からすると、現物出資はできないようにも思えます。

しかし、現物出資とは、別に「物体」であることは必要なく、譲渡可能で、貸借対照表に資産計上が可能なものであればいいのです。

したがって、ビットコインやイーサリアム、モナコインなどの仮想通貨でも現物出資は可能です。

そこで、実際にビットコインを現物出資して設立した株式会社を例に説明します。

 

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現物出資の場合に必要となる定款の記載

 

通常の金銭出資であれば、定款の記載は以下のようになります。

 

(発起人の氏名、住所、割当を受ける株式数及びその払込金額)

第26条 発起人の氏名、住所及び発起人が設立に際して割当を受ける株式数及びその払い込み金額は、次のとおりである。

大阪市北区芝田1丁目4番17号
田中一郎 100株 金1,000,000円

 

これに対し、現物出資の場合には出資した財産の特定が出来る程度の記載が必要となります。

 

現物出資で設立する旨を最初に書き、別紙で出資の目的たる財産の詳細を記載する方法が一般的です。

あくまで資本金は円ベースなので、仮想通貨の数量の記載だけではダメで、定款作成時のレートで換算して仮想通貨の数量を示す必要がありますのでご注意ください。

このレートは、こちらは普段利用している仮想通貨取引所のレートを利用してください。

 

(発起人の氏名、住所、割当を受ける株式数及びその現物出資の内容、金額)

当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的たる財産、その価額及びこれに対して割り当てる設立時発行株式の数は、次のとおりとする。

1.現物出資者の氏名 田中 一郎
2.目的財産の表示及び価額  以下の通りとする。

財産の所在 田中一郎のハードウェアウォレットOO内

ナンバー 123456

基準日:平成30年6月18日

数量:1.23BTC

金額 金100万円
3.現物出資者に対して割り当てる設立時発行株式数 100株

 

 

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仮想通貨を現物出資する方法での外国人の会社設立のメリット

 

次に仮想通貨を現物出資する方法での会社設立のメリット・デメリットについて説明します。

 

①現物出資の名義変更のコストがかからない

不動産などと違い仮想通貨は名義変更という概念がなく、登録免許税、不動産取得税などもかかりません。

②利益を確定したくない場合に便利

個人で持っている仮想通貨をどうしても利確したくない等の理由がある場合には、法人として継続して利用できるメリットがあります。

ただし、会社設立後も個人口座で取引する事は避けてください。会社設立後は、個人口座から法人口座へ移すなど、個人の所得と法人の所得とを厳密に区分することは必要ですのでご注意ください。

③仮想通貨で経費を支払える

個人で仮想通貨を使用した場合、使用時に値上がりしていれば所得税が課されますが、使用しても経費にはなりません。

一方法人の場合には仮想通貨を事業のための経費で使用した場合には、値上がり益に課税される点は同じですが、その時点の価格で経費にもでき所得から差し引くことができるので、税金の計算上有利です。

④非居住外国人の経営管理ビザの取得に有利

これは外国人が日本に会社設立する場合の特有の問題です。

日本に居住していない非居住者の外国人の場合、頭を悩ませるのが、日本の銀行口座の問題です。

法改正により、非居住者の外国人のみで会社設立は可能になりました。

しかし、依然として会社設立前に資本金相当額を日本の銀行口座に振り込む等の方法で資本金の証明は必要です。

そうすると、日本に銀行口座がない場合は、資本金の証明ができず、会社設立ができない、ということが多くありました。

そこで、このように仮想通貨を現物出資することで非居住者の方も会社設立が容易になります。

さらに、会社設立後、経営管理ビザを申請する場合、資金の出所を入管に追及されます。

ここで金銭出資であれば、ハンドキャリーであれば、どのように資金をもってきたのか証明が難しいことがあります。

しかし、ビットコインやイーサリアム等の仮想通貨であれば、記録が残っているので、証明は可能です。

また、特に中国人の方は、年間5万ドルの送金規制があり、これがネックで日本に多額の送金が難しいという問題があります。

しかし、ビットコインやイーサリアム等の仮想通貨を現物出資する方法であれば、多額の資金を送金しなくても日本に会社を設立することが可能になります。

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仮想通貨を現物出資して株式会社を設立するデメリット

①出資時に個人に課税される

個人と法人は別人格となりますので、個人が仮想通貨を法人に現物出資した場合には、「一旦仮想通貨を売却した」ものとして取り扱われ、利益が出たとみなされる場合、個人に所得税が課されます。

ですので、仮想通貨の価格が落ちているときに行うのがお得なのですが、仮想通貨は値動きも激しく、タイミングが難しいという問題があります。

また、年度内に利益が出たとみなされる分については、個人の確定申告(翌年の3月15日)までに現物出資した分の納税資金を準備する必要があります。

「出資する金銭がないから、とりあえず仮想通貨を現物出資しよう」と考えても、後からいずれにしても納税のための金銭が必要になりますのでご注意ください。

②入管が仮想通貨のことを理解してくれないかもしれない

これは会社設立後、外国人の方が経営管理ビザを申請する場合、きちんと入管に仮想通貨を現物出資する理由や流れを説明する必要があるということです。

入管の審査官は「仮想通貨って何?」という人も多数いますし、取引をしたことのある方のほうが少数派です。

そうすると、仮想通貨で現物出資の方法で会社設立し、何の説明もなく経営管理ビザの申請をすると、不許可になる可能性があります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

仮想通貨の現物出資による会社設立は非常に新しい形の会社設立であり、今後増加していくとは思います。

しかし、現時点ではかなりレアケースのため、役所の方も悩んでしまうかもしれません。

そのため、会社設立や経営管理ビザの申請をお考えの方は、専門家に相談しつつすすめた方がよいと思われます。

当事務所では、仮想通貨の現物出資による会社設立は非常に新しい形の会社設立のサポートを行っておりますので、このような形態での会社設立をお考えの方は、是非ご相談ください。

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